● 場 所 慶應義塾三田キャンパス南校舎4階「445教室」 ● 参加者 53名 講師:菅沼三田診療所副院長 菅沼安嬉子先生 皆様、こんにちは! 本日は、全国からお見えになったとのことで、教室が満杯状態、感激しています。 私は医学部を昭和43年に卒業した内科の医師でいろいろな所でお話をさせて頂いています。専門は動脈硬化です。私の恩師はコレステロールの専門家です。ご自分でも玉子は食べませんでした。結婚式のフルコースの場合、メインテーブルなので料理は全部を食べるが、半分ずつ残すというご自分の理論を実践された方でした。 私が結婚した相手は、三田の裏にある済生会中央病院の医師、私の父の主治医だった人です。当時、私は病院内で一日中勉強したいと思っていましたが、新婚旅行の途中で夫から地域医療に貢献したいと言われまして私も開業医になりました。田町駅から慶應仲通りに入口手前右を入った所にクリニックがあります。大学では三田に通わなかったですが、三田で育ち、三田はふるさとです。 医学部の同窓会は三四会と呼びます。昔は三田で3年、四ツ谷で4年勉強したからです。いま、三四会の会長が連合三田会の会長をやっておられます。私はその秘書みたいにお手伝いをしていますので連合三田会の仕事もして三田会のお付合いが多くなりました。 動脈硬化が専門ですが、開業医だけでは面白くありませんでした。慶應の女子高で保健科目の授業をやってみないかと誘われ、母校でもあり、やんちゃな女子高生であった自分の若い頃を振り返り、やってみようということになりました。 保健は内科だけではありません。女性ですから、生理の仕組み、妊娠や出産など大事です。環境問題などもあり多岐に渡ります。そこで勉強をし直しました。産婦人科は、10~20年前と比べて変化しています。女子高生は、役に立つとなると目の色を変えて聞きます。役に立たないとなると別のいたずらをします。面白かったです。 私はいろいろな話の引き出しを持つことになりました。ここでは、環境ホルモンのお話を皆様にしようと思っていました。しかし、吉浜副会長から、私の著書「正しく食べて健康に生きよう」を題にお話をして下さいといわれましたのでこのお話をさせて頂きます。私の専門でもありますのでお聞きいただきたいと思います。 食の問題は、いろいろと沢山の本があり、テレビでも話題が豊富です。皆様の中には、年齢的にも高血圧のお薬を飲まれている方もいるでしょう。例えば高血圧を例にとると塩。「塩分はダメ」医者にもそう言われているでしょう。聞き飽きたということにもなりますので、塩分はがんにもなるという裏話も入れ、何故にそうなるのかなどのお話をいたします。 日本は世界一の長寿国です。男性は一位から三位になりました。女性はまだ一位です。平均寿命で男女合わせると日本は世界一ですが、二位はアイスランド、寒い国です。何故に二位か不思議です。次に健康寿命、医者に診てもらいながら薬を飲んでいても、自分で自由に行動できる人は健康寿命に入りますが定義は明確でありません。 家事や旅行が出来なくなる人、寝たきりになる人、老人ホームに入る人、死ぬまで重病を患う人は健康寿命から外れます。 「ピンピンコロリが理想です」皆さんそう言われます。しかし、そうはなりません。倒れると、誰かが救急車を呼びます。病院に連れて行かれます。あらゆるところに管を付けられます。スバゲテイ症候群といわれています。 今の医療は人の命を助けてしまいます。助かって元のように元気になれば良いが、障害が残ると辛いことになります。平均寿命は伸びて世界一は凄いと思っていましたが、最近は介護問題など、長生きしても辛い話ばかりが聞えて来ます。平均寿命より、健康寿命が重要です。男性はこの差が9.1年、女性は12.4年、世界一の日本人女性は病んで動けない年が10年以上もあります。これが問題です。元気で長生きするにはどうしたら良いかが課題です。 日本の健康寿命、一位は静岡県。気候も良く日本茶が身体に良いようです。カテキンがすごく良いです。静岡は離乳食の時から日本茶を飲んでいます。出がらしはダメ、入れたてのお茶が良いのです。毎日7杯以上飲まないと効果はないようです。美味しい魚もあります。二位の愛知も同じです。何故に群馬が三位なのか、良く解りません。東京は38位、大阪は47位です。 健康寿命を縮めるトップテン、喫煙はダメですが、本日は食物の話です。日本人の死亡原因、一位はがん(悪性新生物)、二位が心疾患、三位が脳血管疾患です。 まずは塩分、血圧にも悪いががんにも悪いのです。日本人には胃がんが多かった。食塩はがんにも関係します。私は内科医、血圧の患者さんに塩分ダメよという。1日6g。6gとはどの程度か?外食すると、11~12gです。日本食で6gは難しいです。しかし、がんを予防できるならば、やる気にならなければなりません。ところが、今年の夏は暑かったです。熱中症で死ぬ人もいました。今年は塩分を控えなさいと強く奨めることが危険かなと思いました。 日本人はやるとなると熱心にやります。特に、港区はお金のある区、クリニックの裏は都営住宅でお年寄りが多いです。患者さんが私に熱中症予防の塩飴を持ってきてくれました。区が配ったそうです。もの凄く甘くてしょっぱいのです。お年寄りはこれを舐めれば熱中症にならないと信じています。患者さんは糖尿病、どうしよう。血圧も上がるだろうと思いました。判断に難しい面があります。大切なことは、内容を理解して、自分に合う食生活や日常生活をすることです。 塩分を少なくしても血圧が下がらない人もいます。日本人と黒人は塩分感受性の強い人が多いです。日本人高血圧の約85%です。塩は「NaCl」、ナトリウムが血管を収縮し、血圧が上昇します。野菜のカリウムが入ると、血管を拡張し、余分な塩分を排出、血圧が低下します。血圧の高い人は「生野菜を食べなさい」と言われます。生野菜や果物にはカリウムが多いのです。 特に、お酒の席では塩分が多いです。秋田に脳卒中が多いのは、枡酒の枡のふちに塩を置き、舐めながらお酒を飲みます。救急車要請も日本一でした。塩を止めようと運動をして、やっと改善が進みました。脳卒中はなりたくありません。 心筋梗塞は生きるか死ぬかです。心臓には太い血管が3本しかありません。一番太い血管が詰ると、心臓がトラブリ、死んでしまいます。心臓は1日に約10万回も伸縮します。これが心筋梗塞で、やや細い血管が詰ると、もの凄く痛いですが、救急車で名医の居る病院に運ばれると助かります。助かると、後遺症はありません。もちろん、フォローのために、何か月かに1回は病院に通いますが、皆さん元気で正常の仕事に復帰できます。 脳の場合、場所によって、半身不随になります。いろいろな障害が残ります。何故か?心臓と脳の血管は終末動脈と呼ばれ、血液の流れが一方向のみで交差しません。血液が流れなければそこが死にます。神経細胞は再生しません。そこからリレーしている手とか足が痺れあるいは動かなくなります。これが脳卒中です。 何故に血圧が問題なのか?サイレントキラーと呼ばれ、圧が高くなると、土石流のような勢いで血液が流れます。 昨日、私は患者さんを怒ってしまいました。私は完璧主義で、気に入るまでやらないと済まないのです。日頃、夫からは、患者さんを怒るのでなく、逃げ道をつくりなさいと言われていました。そうは言っても、言うことを聞かなければ、患者さんが倒れてしまいます。いつも頭の中で反発していました。しかし、子育てをしたら、私の完璧主義は一気に壊れてしまいました。子供には、完璧主義が通用しなません。子供がいなかったら今頃は人を追い詰めるいやな医者になっていたかもしれませんね。 その高血圧の患者さん、昨年の暮れに2ケ月分の薬を出していました。その人が久しぶりに見えました。半年も薬を飲んでいませんでした。血圧が198/118、これでは鬼怒川の堤防が決壊する寸前と同じです。紹介状を書くから、自宅近くの通える医院に行きなさいと伝えました。 血圧が高いと脳の血管が切れます。切れる寸前の血管内は、乱気流のように渦を巻き、固まって詰まることもあります。これが脳梗塞です。最初、高血圧は痛くも痒くもありません。血圧が150以上で頭が重くなる人もいますが、200を超えても何ともない人もいます。何ともない人が危ないのです。突然に倒れます。血圧が低めで穏やかに流れていれば、血管が長持ちをします。体には血管が一番のライフラインです。 塩分が多いと血圧が高くなります。患者さんに血圧170以上の人がいました。薬は飲みたくないというのです。では、塩分を控えなさいと指示をしました。1ケ月後に来院、血圧が135になっていました。どうしたのと聞きました。その人は、やはり完璧主義者で、味噌汁はやめ、刺身をお酢で食べたと言っていました。さらに、1ケ月後には血圧110程度になっていました。その後、来なくなりましたので、血圧は上がらなかったと思われます。塩分は少な目が良いのです。今日はこれから懇親会です。でもお酒は葉物1枚では美味しくありません。外食で、塩分を取り過ぎたならば、自宅で生野菜を食べて調節して下さい。 WHO(世界保健機構)によれば、塩分1日6グラムが指標ですが、日本人には少し厳しいです。ラーメン1杯は6グラム、1日分が消費されます。梅干しは1個で1日分の1/3、せんべいは2枚で1グラムです。なるべく少な目がよいのです。うどんやそばは汁を飲まないようにしましょう。汁に塩分が多いのです。汁は1口にします。野菜は1日350グラム、目安は、1日3食、1回分が手のひら1杯分程度です。アンチエイジングにもなり、がん予防にもなります。 塩分はがんにも悪いというお話をします。現在、男性は大腸がんが1番、日本人女性は昔、乳がんがほとんど無かったのです。欧米人に多く、乳脂肪や油類の多い食事で乳がんになるとされていました。今では、日本人の女性、乳がんが1番になりました。乳房の全摘出でなく、一部を取り除き、薬で治療する方法もあります。乳頭を温存し、シリコンを入れる、または後ろの筋肉を持ってきて整形することもあります。 なるべく、がんにはなりたくないです。一般の人は、がんは放射線が一番怖いと思っています。 発生原因は、放射線が3%、あまり多くありません。食べ物やタバコが主要な原因です。がん細胞が見つかるのは、レントゲンやエコーやCTなど、1cm程度の大きさ、名人が見つけて5mmです。1個のがん細胞は数ミクロン、それが1cmになるまで、倍々に増殖するが、20年は必要です。皆さんの身体に、毎日約100個のがん細胞ができています。30代頃からできます。細胞はDNAをコピーするが、そのコピーが少し異常になるのです。細胞分裂に関与するDNAが間違えると、分裂が止まらなくなり、増殖を繰り返します。通常は、傷が付いても修復できます。細胞は体内でプログラム化されているのです。指などは切り落とすと、伸びることが無く、ある程度のところで止まります。そして、皮膚は皮膚の細胞になります。ところが、がん細胞になると、それが滅茶苦茶になります。 発がん説、簡単に多段階発がん説の説明をします。最初に発がん物質(イニシエータ―)が体内に入ります。その後、促進物質(プロモーター)が加わり、がんができるのです。促進物質が先で発がん物質が後だとがんになりません。DNAが傷つくと、変異して、それを育てるモノが加わり、がんになります。例えば、子供が育ち、変にグレ、チンピラになります。しかし、良い先生に巡り合い、説得して貰って、真面に戻れば良いですが、巡り合わずに悪い人に引っ張られると、立派なヤクザの親分になるようなものです。がん細胞もしっかりしたがんになってしまいます。これが身体の中で起こります。 1日100個、がん細胞ができますが、体内を白血球が回り、その見張り役ががん化した細胞を見付けています。1個のがん細胞に約100個のリンパ球で退治しています。ところが、免疫力か落ち、リンパ球の数が少なくなりますと、がん細胞が育ってしまう。良く落語を聞くと、身体に良いといいます。笑うと、不思議に、ナチュラルキラー細胞(リンパ球の一種)が育ち増えます。民間療法ですが、元気な時の自分のリンパ球を培養します。そして、がんになると、それを体内に戻すという。理論的に正しいのですが、1~2cmになったがん細胞はもの凄い数です。リンパ球の数が絶対的に足りません。効果が少ないのです。その前にがんにならないようにしたほうがいいです。 発がん物質には、放射線とか化学物質、いろいろあります。B型肝炎やC型肝炎は、親からとか、予防接種針からとかでウイルスが入りがんになります。50歳くらいからがんになります。 日本人の好きなわらび、横綱クラスではないが発癌物質です。良く食べる東北地方や奈良県に多い。奈良県山間部は茶がゆで食道が焼け、わらびの発がん物質が入ります。その地方で食道がんが多いようです。山菜そばでも熱いお汁とわらびは危ないです。その場合、わらびは出し、お汁は飲まないようにしましょう。 時間が無く、詳細な話はできませんが、体内で発がん物質を作り出す話をします。亜硝酸塩は、窒素肥料で作った野菜に含まれています。二級アミンは、生臭い魚の基で、古い肉でも発生します。この両方が胃の中に入ると胃液の酸で大関級の発がん物質ジメチルニトロソアミンができます。しかしこれは100mg程度のビタミンCで消去されます。漬物は良くないです。キムチは、塩、唐辛子、お魚も入れます。二級アミンが多いと思います。韓国人は、ほとんどの方が胃炎を持ち、胃がんになり易いです。 発がん性のあるカビには、ピーナツのカビ、漬物のカビ、などがあります。漬物は、上に薄っすらとカビができます。中国の奥地では、あのカビの水を飲むという。食道にカビ生えているのです。WHOで調べたとき食道がんが多発していました。 私の母は昔の人、餅のカビを削って食べていました。カビは表面だけでなく、根が生えます。少しでもカビが生えているものは食べないのが無難です。 胃がんは、ジメチルニトロソアミンができ、発癌物質になります。食塩が促進物質です。動物実験で、マウスを50匹ずつに分け、餌は同じにして水と食塩水を分け与えました。私たちが味噌汁を飲むようなものです。食塩水を与えたグループは、がんが進行して、死んでしまいました。血圧だけでなく、がんの予防にもなるので塩分はなるべく止めましょう。 がん予防には、食物繊維とか、ビタミンとか、実験をしているが、菜の花、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、大根など、アブラナ科の野菜は乳がんに良いです。乳がん手術後、これらの野菜を患者さんたちに食べさせましたら再発を抑制できました。がん予防のお題目、「まごは(わ)やさしい」と覚えて下さい。「豆類」「ゴマ」「ワカメ」「野菜」「魚」「しいたけ」「イモ類」です。アンチエイジングにもなりますので毎日の食事に取り入れて下さい。 糖尿病は遺伝子です。同じ食事をしていても、糖尿になる人とならない人がいます。痛風も同じです。第二次世界大戦の時、日本人に痛風と糖尿は1人もいなかったのです。当時、イモ類しか食べられなかったですから。いま、豊かな食生活ができ、高血糖が問題です。 食べ物を食べると、血液中の糖が増え、細胞がこれを取り込み、ミトコンドリアというエネルギーを作る工場で、ATPというエネルギー貯蔵物質になります。食べなければ、身体は動かないですが、摂り過ぎて甘い血液が流れると、血管がボロボロになります。毛細血管がやられ易いです。腎臓や目の網膜がやられます。足の血液の循環が悪くなり、足に傷が付くと腐るのが問題になります。何故に糖尿病になるのか?血糖値を上げるホルモンが8種類、下げるホルモンはインシュリン1つのみ、糖尿の人はインシケュリンが足りないのです。または効きが悪くてなります。 人間は太古の昔から、飢えとの戦いでした。飢饉になれば木の根をかじり、低栄養で耐えてきました。脳は体内の20%もの栄養と酸素を消費します。脳を守るために、血糖を上げなければなりません。脳を助けるため少しでも血糖を補って、なるべく脳のコンピュータを動かすようにしました。血糖が脳に多く来過ぎるという想定がありませんでした。人類の進化の過程で、高血糖は想定外であったのです。結果、血糖値を下げるホルモンが1つだけになったのです。欧米人は、狩猟民族だったので出掛けて行って食べ物を選べました。農耕民族は、飢饉になるとアウト、そこで倹約遺伝子が出来てきたと云われています。このため高カロリーになると糖尿になり易いのです。太っていなくても糖尿になります。糖尿と言われたら糖質を減らして運動をしましょう。 お酒、これから酒席が待っていますが、人類は何とかお酒を造ろうと必死でした。ありとあらゆるものから、世界中でお酒を造っています。お酒が無いのはイスラム国だけでしょう。 体内にはアルコール分解酵素があります。特に、アセトアルデヒド脱水素酵素が最も強力です。1型と2型があります。2種類を持っている人は、アルコール代謝が速く、なかなか酔いません。赤くもなりません。私も顔に出ないです。気持ち良くもなりません。しかし、一気飲みすれば、血液中のアルコール濃度は上がります。 赤くなる人は1種類の酵素しか持っていません。すぐに倒れてしまう人は、両方の酵素が全くありません。欧米人の約97%は子供でもビールやワインを飲んでも平気です。日本人は2種類持っているのは約50%程度です。赤くなる人はアセトアルデヒドが体内にできます。かなり毒性が強いです。悪酔いの原因にもなります。発がん性もあります。強いお酒を飲むと食道がんになったりします。あらゆるがんにもなりますので、赤くなる人はなるべくお酒は止めるべきです。日本人の35%です。 お酒と喫煙で食道がんになる確率は3.4倍になります。昔は34%ともいわれました。特に、妊娠している人は一滴も飲んではいけません。 子供が欲しいと思ったら最初から飲まない方がよいです。お酒は子供の脳に影響します。動物実験で分っています。小頭症になります。アメリカはアルコール中毒の女性が多く、生れた子は知能障害が多いです。妊娠9ケ月でも胎児の脳の発育に悪影響があります。良い孫を持ちたいならば、娘と嫁に、お酒はダメと言いましょう。 お酒の量、通常は20g、ビール500ml、日本酒180ml、ワイン160ml、どれか1つが適正飲酒量です。ほどほどにしましょう。 痛風の話。肉や魚に多いプリン体が原因です。尿酸という針状結晶が関節や腎臓に突き刺さります。関節の場合、痛み止めを1週間程度飲めば治まりますが、腎臓で目詰まりすると透析になることがあります。尿酸値を下げる薬を飲むか、お酒や肉や魚を控えます。第二次世界大戦の時、日本に糖尿病と痛風患者は一人もいなかったのです。 できれば、朝はしっかりと食事をしましょう。現代人は、夜12時頃帰宅、夕食を食べ、すぐに寝てしまいます。胃がもたれ、朝は食べずに出勤の人が多いです。働き方を変えるべきですが、世界との競争が厳しく、日本人は益々忙しくなる方向にあります。タンパク質をあまり食べてはいけない人は痛風の人だけです。それ以外の人は、必ず摂取し、その3倍の野菜を食べましょう。これはアンチエイジングにも必要です。 皆様の場合、1日当り70~80gのタンパク質が必要です。お年寄りになると、タンパク質をあまり食べなくなります。タンパク質が不足すると、血管がボロボロになります。 勘違いする点は肉100gがタンパク質100gではないことです。肉や魚は水分や脂肪が多く、ほんとうのタンパク質はその1/5程度です。100gの肉なら、20gがタンパク質だと思って下さい。例を挙げると、朝の食事にタマゴ1個か納豆、お昼は鮭弁当、夜は100gのステーキを食べるくらいです。毎日でなくとも、この程度のタンパク質が必要です。 歯が悪くなると、食べられなくなり、脳に刺激が行かなくなります。猿人から人類が分かれ、直立歩行するようになりました。顎が引っ込み、噛む力が強くなり、大脳が発達したという説があります。噛まなくなれば、脳への刺激が少なくなります。ぼけ予防のためにもよく噛みましよう。 人体は建物と同じです。骨は鉄筋コンクリート、筋肉は壁、血管や神経はガス・水道・電気の配管と思ってください。生まれた時から、メンテナンスが必要です。動くだけで、骨にカルシウムが行き渡り骨も丈夫になります。人間の身体は細胞が壊れるのです。修復するのに、タンパク質(アミノ酸)やビタミンやミネラルを使って、様々な栄養素で、造り直しています。しっかりと食べ、身体を動かすことが大切です。 日本人はカルシウムが不足しています。患者さんに牛乳を飲んでいますかと聞くと、毎日飲んでいると答えます。どのくらい?と聞くと、コップ1杯という。牛乳で1日600ml必要、コップ1杯は200mlです。海藻類にも多いが、海藻、小魚は沢山食べられません。乳製品で補うほうがいいでしょう。しかし乳脂肪が多く含まれます。コレステロールの高い人は、あまり美味しくないが、低脂肪牛乳をお奨めします。 最後に、いまサプリメントが全盛期です。医者が処方する薬は縛りがあります。製薬会社は動物実験を行って、人でも副作用を確認します。その後、厚労省が認めると、保険適用になります。そこまでに約150億円も投資します。しかしサプリメントは自己責任で購入します。最悪、死んでも自己責任です。裁判でも負けます。医者から処方された場合、被害に合うと、国が救済処置を講ずることもあります。これが薬の仕組みです。テレビの宣伝は1千万円もあればできます。サプリメントの効能は良くわからないものもある。医者の処方する薬とは違います。死ぬこともあるというリスクを頭に入れましょう。世の中は怖いこともあります。本日はご清聴どうもありがとうございました。 (記録・文責:高橋 豊) (質疑応答) 質問1.12~3年前から心筋梗塞を患った。今年再発、4ケ所詰った。ステントを挿入したが、カテーテルでも1ケ所除去できずに残った。 応答1.50%狭窄なら生存可能、90%狭窄だとそのままは厳しい。少しずつ運動する、血液さらさらの薬を飲むなどです。血流はバイパスで迂回することもあります。 質問2.マーガリン、アメリカでは禁止の方向にあるが、日本の場合はどうなのか? 応答2.日本は禁止になっていません。マーガリンは不飽和脂肪酸(炭素と炭素の結び付き二重結合有)、バターは飽和脂肪酸(炭素と炭素の結び付きに二重結合無)、マーガリンは液体の不飽和脂肪酸が水素結合で固まったもの、その水素結合が動脈硬化を促進するというデータがアメリカで発表され、バターの方が良いとされました。ショートニングという不飽和脂肪酸は、パン・お菓子、いろいろなものに使われ、日本では、禁止できなくなっています。今後、どうなるのか分かりません。アメリカと日本は、食べる量が違いますが、できれば食べない方がよいでしょう。医学の世界は、常識が一瞬に逆転する傾向があります。尿管結石はカルシウムがダメ、牛乳を飲むのは良くないと言われていました。最近、カルシウムを吸着して排出するから、牛乳を飲めと言われます。肝硬変は、低タンパク・低栄養でなければダメと言われました。それが高タンパク・高栄養が良いというのです。いま、アメリカは心筋梗塞の対策に必死です。日本もいつかダメと言われるかもしれません。 質問3.朝の味噌汁、塩分を薄目にして、ゆずなど、香辛料を使う。味噌汁は好きです。 応答3.味噌は体に良いが、塩分が多いです。具を8分目、お汁を1口にしましょう。ゆずは大丈夫です。血圧に無関係です。胡椒を取り過ぎると、胃を荒らし、胃がんになる可能性があります。
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